筑後川の恵みで元気な地域づくり!

プロジェクト:エツでは、平成20年より3年計画でエツに関する委員会を設置しました。委員には、国土交通省の筑後川河川事務所や福岡県・久留米市の関係部署、下筑後川漁業協同組合、久留米・大川商工会議所、佐賀県佐賀市南商工会(平成22年4月1日旧諸冨町他3商工会が合併)など広く関係機関の方々になっていただいております。
この委員会では、地域資源として筑後川だけに棲む希少なエツをまず、いかに確保するかを主眼に急速冷凍技術により供給と価格の安定を図り、新商品を開発することにより「事業者の経営向上」と「地域活性化」を目的として設置しました。
石井先生コーディネーターによる資源、冷凍技術部会、新貝先生コーディネーターによる商品開発、マーケティング・広報部会の4つの専門部会にて検討を始めました。
平成20年度 1年目
資源保護について
- エツ資源の現状と関連要因の認識
- 筑後川のみならず有明海を含めた広域的保護活動が不可欠
- 事業者だけでなく行政、一般市民の指示が必要

久留米市の下筑後川漁業協同組合(原口勝良組合長)は、7月、久留米市城島町筑後川河川敷でエツの稚魚を放流した。2、3年で成魚になるという。
エツはカタクチイワシ科で、国内で筑後川下流域と有明海にしか生息していないとされる。 同組合は、年々減っている漁獲量を増やすため、約10年前から稚魚を養殖し、毎年放流を行っている。今年は8月上旬までに約30万匹を放流する。 稚魚は、生後約1ヶ月で体長約2~3センチ。 組合員や地元の子供たちが「大きくなって帰ってこい 」と願いを込めて筑後川に放流した。原口組合長は、「今年も(漁獲量)少ない。少しでも増えてほしい」と話していた。
出典:2010/07/06付 西日本新聞朝刊より
視察研修
12月12日 ㈲敬天水産(鹿児島県)へCAS冷凍設備の視察研修に伺いました。
会社概要
商号 | 有限会社敬天水産 |
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代表者 | 代表取締役 濱田幸成 |
本社 | 鹿児島県鹿児島市桜島赤生原町350 |
加工場 | 鹿児島県鹿児島市桜島赤生原町455 |
設立 | 平成8年8月30日 |
資本金 | 5百万円 |
事業内容 | かんぱち・はまちの養殖、加工 |
従業員 | 26名 |
事業規模 | 養殖生簀110台 かんぱち種苗30万尾 はまち種苗8.5万尾(平成19年) |
- 鹿児島で初の三冠達成!!平成20年度鹿児島県水産物品評会 「農林水産大臣賞」
- 2008かごしまの新特産品コンクール 「鹿児島県知事賞」
- 平成20年度鹿児島県新加工食品コンクール 「大賞」
鹿児島の錦江湾に雄姿を映す桜島は、観光のメッカであり県内有数のかんぱち・ぶりの養殖地として知られています。
㈲敬天水産のかんぱち・ぶりは魚臭さや肉割れがなく、更にほど良い脂の乗りと旨みが加わり、脂濃さを嫌う若い人や女性に支持されています。
CAS設置の目的
- 寄生虫除去や販路開拓の為、高品質の冷凍品を要求されたことにより実施
- 養殖かんぱち・ぶりを加工、CAS冷凍しホテルや料理店等に販売
- 設置当初に比べ、売上は3倍に伸びた
CAS(キャス)とは?
- 微弱電磁波と急速冷凍の組合せで細胞膜を破壊せずに保存できる
- 魚・肉・野菜・果物・加工食品など応用範囲が極めて広い
- ㈱アビーが開発、世界19カ国の特許取得
㈲敬天水産を視察して各種食品の試食を行った
(鮮魚)カンパチ刺身、燻製カンパチ刺身、炙り燻製カンパチ、いか刺身
(野菜)ほうれん草
(果物)みかん、完熟マンゴー
特に、ほうれん草とみかんについては、通常の冷凍品との比較試食し、個人差はあると思うが、CAS冷凍品の優位が認められると思われる。 カンパチ、いかなど鮮魚刺身については、美味であり、生ものと変らないという意見が多かった。
平成21年度 2年目
急速冷凍について
7月10日(金)11:30~14:00 エツの急速冷凍試験実施 ((資)坂井製瓦にて:久留米市城島町)
- エツは獲れたて(鐘ヶ江博文さんが7月10日早朝に漁獲したもの)
丸のまま、ほねぎり加工…5匹 3枚おろし…5匹 刺身…5匹 洗い…5匹 合計 20匹 - 販売品(7月10日午前中、ストアーより購入)
丸のまま、ほねぎり加工…15匹
丸のまま、ほねぎり加工なし…15匹
3枚おろし…15匹
合計 45匹 - エツは魚体が薄いことも有り、-40度℃で1時間程度で急速冷凍可能。
- 今回は、CAS冷凍設備に代わり㈱フリーザーシステム(飯塚市)が開発したバッチ式フリーザーにて急速冷凍試験を実施。エツの内温を測定する為、熱伝対素子を挿入し、時間経過を測定。
冷凍保存したエツの試食を実施
11月16日 およそ130日間冷凍したエツを調理して試食会を開催
試食人数10名(内訳:料理人4名、一般人6名)
感じたこととして
- 急速冷凍したエツは、食味・食感において生鮮品と遜色ないと思う
- 全体的に季節のエツと大差ないと感じた
- 冷凍でも食べ比べない限り、生鮮品との差が感じられない。つまり、不漁の時の確保として
また、からあげ・焼き物・甘露煮・団子など加工用材料として積極的に進める価値がある。 - ㈱フリーザーシステムの急速冷凍機は、保存に関して充分実用可能であり、設置コストが大幅に削減可能である。
資源保護啓発ポスター制作
関係者のみならず、広く一般住民にも周知することを目的にポスターを制作した

筑後川のエツを考えるシンポジウム開催
平成22年2月13日(土) 午後2時
城島総合文化センター インガットホールにて (久留米市城島町)
下記の通り4部構成にて開催

- エツの保護を地元中心にマスコミにも訴えかけて危機にあるエツの現状をアピールすることを目的として開催した。
- 会場内にて筑後川に棲む魚たちの展示、エツは夏の魚なので冷凍でした。
第1部 「エツと坊さま」
ボランティアグループ“野火”によるブラックシアター

ボランティアグループ “ 野火 ” は 、城島町を拠点に活動しているグループでメンバ ーは10人、今年で26年目を迎えられるそうです。ブラックシアターとは、登場人物のパネルに蛍光塗料で色をつけて上演する人形劇のようなもの。 暗くした部屋でブラックライトをパネルに当てると人形たちが幻想的に浮かび上がります。 城島町に伝わる「エツ誕生伝説」を披露。
「エツ誕生伝説」
その昔、ある一人の僧侶が有明海から筑後川を上って城島に入り、対岸の肥前に渡ろうとしました。しかし、金を持たない僧侶は船に乗れず途方に暮れていると、一人の貧しい漁師が不憫に思って船を出し、対岸へ渡してやったといいます。僧侶がそのお礼にと、岸辺のヨシの葉をちぎって川に投げ込んだところ、それがエツに姿を変え、以後、町は毎年この時期を迎えるとエツ漁で賑わったそうです。
このときの僧侶が弘法大師であったといわれ、地域の人々は「エツ大師堂」を建て弘法大師を手厚く祭り、千年の時を経た今もなおエツの恵みに感謝を忘れないといいます。
第2部 「ふるさとのじまん」エツについて
城島小学校5年生による発表

地元城島小学校5年生が城島町で皆様に自慢出来るものとして筑後川とエツを知ってもらいたいという目的で年間を通して調べた「ふるさとのじまん」エツについて発表
第3部 講演会 「エツの現状と今後の課題」‐川と海を往復するエツに有明海再生の道を学ぶ‐
講師:田中 克氏 (京都大学 名誉教授、農学博士)

有明海や筑後川に棲む生き物たちを長年調査されて特に詳しい京都大学の名誉教授で農学博士でもいらっしゃる田中先生をお迎えして講演会開催。
エツが年々減少している現状について「筑後川の水温・水量・プランクトン等の影響が考えられ、水質汚染や森林伐採などとも複雑に絡んでいる。」と田中氏は指摘している。
第4部 パネルディスカッション「現在の活動状況について」

講師や地元の6名のパネリストにより現在の活動状況報告や今後のエツの資源保護、商品開発について情報や意見交換を実施
パネリスト
- 田中 克氏(講師)
- 千代島勝則氏(エツ祭実行委員会 実行委員長)
- 中川哲男氏(㈲ブーランジェリナカガワ代表者:エツ実行委員会委員)
- 江島孝子氏(久留米市食生活改善推進員協議会 会長)
- 原口敏治氏(下筑後川漁業協同組合 組合長)
- 西山博文氏(料亭 魚新:エツ感謝祭実行委員会 委員長)
- 鐘ヶ江博文氏(かねひろ:エツ感謝祭実行委員会 副委員長)
飲食店対象エツ料理メニュー調査
- 現地の料理の実態を把握するとともに、事業者サイドの意識を把握する目的で行った。
- 仕入れルートは、市場、漁師、自分でというように調達ルートは幅広い事業者が多い。
- エツ料理の販売で困っている点としては、充分な量の刺身が確保できない、価格が上がってきている、などの意見がある一方で、なければどこからでも仕入れられるという意見もある。